山梨大学 医学部 解剖学システム生物学教室 篠原研究室

研究内容

1. 海馬神経回路の左右差

脳の左右差は有名ですが、齧歯類で脳の明確な左右差が報告されたのは、我々の論文が初めてです(Kawakami et al., Science (2003))。
齧歯類では海馬のCA3-CA1投射が下図のAのように左右で繋がっていますが、マウスの実験で我々はCA3-CA1のシナプスの性質はシナプスが左右どちらから投射を受けているかによって決定されていることを報告しました(Shinohara et al., PNAS (2008))。
なお、生化学と電子顕微鏡観察を合わせると、シナプスの面積とグルタミン酸受容体の間には法則性があることも分かりました(B)。
 そして、この回路の左右非対称性は発生時にプログラムされていることも分かっています。


2. 海馬脳機能の左右差

ラットの左右の海馬から脳波を測定し、機能に左右差があるかどうか観測しました。
ラットを隔離環境(ISO)で飼育した群と、豊かな環境(ENR)で飼育した群に分け、左右の海馬からγ波を測定しました(下図A)。すると、豊かな環境ではγ波の振幅が大きくなりましたが、右側の方が左側より振幅がさらに増大しました。
また、左右γ波の同調性も上がりました(下図B)。
また、ENR群のラットCA1シナプスは、右側では左側よりシナプスの数が増えることも分かりました(下図C; Shinohara et al., Nat Commun (2013))。

今後も、当研究室では、脳の左右非対称性についての謎を解き明かしたいと考えています。